積み木・木のおもちゃなどの童具を紹介する、和久洋三の童具館

トップ > 童具の紹介 > 童具創作ノート

童具創作ノート

ケルンボール

ケルンボールについてのエピソードです

 自動でクルクル回り、メロディを奏でる<吊りメリー>に私はかねてから疑問を持っていました。最初に出合う童具の一つなのに母と子の触れ合いを必要としないことが不快だったのです。そこで母と子の関係を生みだす<吊りメリー>をつくろうと思い立ち、幾つかの条件設定をしました。

@ 手動の回転体であること。
A 球を用いること。
B 球は乳児が掴める大きさであること。
C 母親が子どもに語りかけ、表情を読みとりながら回転させることができるもの。

 手動の回転体にするために思いついたのは紐による回転機能でした。円盤を利用して、これに紐つきの球を取りつけることはすぐに思いつきました。これならCの条件も満たされます。問題は彩色です。それまで白木の童具ばかりをつくっていたので、仕上りのできぐあいや環境問題のこと等、新しい課題が生まれました。できれば塗料による彩色は避けたかったのですが、この作品ばかりは色がなければ、存在理由がなくなります。フレーベルは子どもに最初に与える色彩を、循環色と虹の色を関係づけて取りあげています。私はその意図をより鮮明にするために回転を考えて循環色にこだわり、赤→橙→黄→黄緑→緑→青緑→青→青紫→紫→赤紫→(赤)、この10色を選びました。塗料の環境問題は食品衛生法の基準をクリアしたカラーラッカーが見つかって解決できました。

 球の大きさは基尺の30mmを導入すれば乳児の手には適した大きさになります。

 10色のバラバラに吊るされた球が、母親の歌声と手作業によって、虹色の美しい輪となり、関係性が生みだす調和の美しさが表現されます。

カラーボール

カラーボールについてのエピソードです

 水をすくうように窪みをつくった両手の中や、椀状の容器の中で球を転がすと子どもがとても喜ぶことをフレーベルは著述しています。この文献を読んで早速、同じことをやってみたのですが、手の中では球はスムーズに転がらず、容器を使うとすぐに外に飛び出します。そこで、球が飛び出ない椀をつくってみようとデザインしたのがこの<カラーボール>です。基本6色の球を入れて、椀の中で花が咲いている姿がイメージできるようにしました。椀で球を覆うと回転しながら進むUFOにみたてて遊ぶこともできます。

 余談ですが、ある女性から手紙をいただきました。失恋の痛手をいやす術もなく本気で死への道を考えていたその女性が、ふと立ち寄った「おもちゃ屋」でこの<カラーボール>を見た時、突然、とめどなく涙がこぼれ落ちてきたそうです。手にとって椀とボールを撫で続けているうちに、流れ落ちる涙にとって代わるように胸の底から気力がこみあげてきて、涙が乾く頃には生きたいと思う気持が湧いてきたと書かれていました。「きっとあのおもちゃの温かさが私を救ってくれたのだと、いまも思っています、ありがとうございました」そう締めくくられたお手紙に私もまた勇気を与えられ、つくり手としての幸福をしみじみと味わわせていただいたことがありました。

<童具創作ノート>の関連ページです

童具館へのご連絡は
電話 03-3744-0909 / FAX 03-3744-0988 / Eメール mail@dougukan.com
(対応時間10:00〜18:00/FAX,メールは24時間受付・対応時間外は翌営業日以降の返信)
このページの先頭へ