■ 童具を上手に取り入れて楽しい子育てを 和久洋三
子どもの成長の「主食」となる童具をどのように与えていったらよいか、お話ししたいと思います。
7 知識を教え込むよりも、知恵を育ててください
人生を豊かに生きていく上で必要なのは知識ではなく、「知恵」です。知識はひとつの点にすぎません。「知恵」はその点と点をつないで関係づけ、ものごとを創造する力のことです。
知識を詰め込む教育は子どもを管理することにつながります。そうすると子は押さえ込まれ、自発性が失われていくのです。それは、アトリエに集まる子たちを見ているとよくわかります。
一、二歳児は実に素直で正直です。自分のやりたいことはしますが、関心のないことには見向きもしません。一緒に参加している母親や父親が口やかましく指図すると、とたんにやる気をなくして、トコトコ流し台にいって、ジャーッと水遊びを始めます。
しかし三歳半を過ぎると、だんだん聞き分けがよくなってきて、他者を精一杯受け入れようとします。活動も一段と意欲的になってきます。四歳になると、友達と協調して遊べるようになり、周囲に自分を適応させる努力をし始めます。
じつは、この時期が子育てで一番危険な時なのです。親はこの頃から、子どもにできるだけ多くのことを教え込もうとし始めます。素直な子ほどこれをけなげに受け止めます。自分のやりたいことを思いっきりやる時間がなくなって、やらされる時間が一日の大半になってしまうのです。自分の気持ちを押し殺し、言われたことをやるだけで精いっぱい。「自発性、積極性」に欠ける人間を量産する原因はここにあるのです。誰かに指示されるまで動けない「指示待ち症候群」も、マニュアルがないと何もできない「マニュアル人間」も、こうした環境によってつくられてしまうのです。小学校に上がるともっと深刻です。学校と家庭という二重の押しつけ教育にさらされることになります。幼い魂がそれに耐えきれるはずがありません。
私は、子育てで、一、二歳児の特徴である「自分でやる!」という態度をもっと大切にすべきだと思います。これが自発性を育て、やがて自主性、主体性へ、そして自立をうながすことになります。
大人になり、積極的に社会に参加していくうえで大切なことは、何を知っているかより、どうコトを成していくかです。創造力が豊かな人にはそれができます。自発的に、前向きに人生を切り開き、生きていることをエンジョイできる……これ以上幸せなことが他にあるでしょうか。子育て中のみなさん、そして保育者のみなさん、子どもの可能性を信じて、自発性を大切にして、のびのびとした、強い生命力を持った子に育つ援助をしてください。
そのお手伝いが童具で必ずできる……多くの実例によって私はいま、そう信じています。
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