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童具館ショップフロアーの一角には、小さな積木遊びのコーナーがあります。そこで3歳になったばかりの女の子が、お母さんと遊んでいました。
「ママ、ジュース飲む?」
「うん、のど渇いているの、ちょうだい」
「ハイ」
女の子は円柱の積木を母親に手渡すと、角柱を手にとり、母親が手にした円柱にジュースを注いでいます。
どうやら角柱はペットボトルのようです。
「こぼさないでね。ハイ、飲んでいいよ」
「あー、おいしい」
「おいしいでしょ。もう一杯飲む?」
「うん」
それから、母子のままごと遊びは延々と続きました。
デパートや玩具店では、いろいろなままごとセットが売られ、とうとう電気仕掛けのミキサーや掃除機まで出回るようになりました。
しかし、子どもは単純な形の積木で充分にままごと遊びをする力をもっています。
ある保育園でのことです。積木を保育室に導入するとき、炊事場やガスコンロまである大きなままごとセットを思いきって片づけたそうです。すると、子どもたちはためらいもなく積木でこの遊びに興じ、なんの不満の声もあがらなかったと保育士から聞きました。 |
みたて遊びを子どもは誰に教えられることもなく一歳半頃から始めます。
この遊びは身のまわりのひとつ一つのものの中に、あらゆるものを読みとろうとし、あらゆる生命を嗅ぎとろうとする活動です。無限の可能性を導き出す洞察力を開発します。「あれがないからできない、これがないからできない」というのではなく、「どうすればできるか」を考える力を身につけていきます。私ができるだけ単純な形体を子どもに与えるのは、単純な形体であればあるほど、その可能性が豊かになるからです。一個の直方体の板が、ビル、ベッド、携帯電話、電気カミソリ、まな板、バス、ローラースケートになることを私は子どもから教えられました。
子どもが楽しみながら自己開発する遊びを大人たちは押しとどめているのではないか、市場のままごとセットを見るにつけ感じることです。 |