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和久洋三「創造共育宣言」 第1章 新しい子どもの誕生@

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自由保育と設定保育

 これでは日本の将来に前途がないことにみんな気づきはじめてきました。文部科学省も教育のあり方を変えようとしはじめました。そのため、授業内容が変更され、<ゆとり>ある時間を子どもが持てるような指導が行われるようになりました。
 しかし、このゆとりの時間をどう扱っていいのか解からなくなり、右往左往して、結果として学力の低下を招いていると指摘する学者、教育者が出はじめて元の木阿弥です。
 これは「ゆとり」ある時間をもつことに問題があるのではなく、その時間を創造的に生かす環境を用意できない大人の側に問題があったのです。
 多くの大人達は<学力優秀>を目指して、詰め込み教育に甘んじたため、ゆとりある時間を充実させる創造的な経験をする余裕がほとんどありませんでした。教師や親達がゆとりをどうしていいかわからないのは当然のことです。暗中模索するしかありません。
 そして、幼児教育界ではカリキュラムをしっかり作って、これに子どもを順応させようとする<設定保育>から、子どもの好きなように一日をおくらせる<自由保育>へと教育のあり方が変わってきていますが、『自由と秩序』の解釈がしっかりされていないために混乱に陥っているのが実状です。
これは以下の点が教育の中で見落とされているからです。
 @ 秩序によって自由が保証される因果が理解されていないこと。
 A 能力に応じて様々な体験ができるための「環境」をどう設定するかについての考察と準備が足りないこと。
 B 教育は本来、知識(情報)を頭につめ込むことではなく、人間とは何か、自然と人間存在の意味するものは何か、などの根本的な問いかけを人類の文化遺産に学びながら探究し、万物の関係性に眼を向ける中で読み取り、人間性を育むことに根本の目的があることを忘れ去っていること。
 この@ABについて解説するには限りない紙数を必要とするので、ここではいくつかの問題提起だけにとどめておきます。

秩序があるから自由が成立する

 人間はあらゆるものの中に秩序=必然を求めます。
 4歳前後になると「なんで」「どうして」とうるさいほど質問するようになるのはそのあらわれです。あらゆるものごとの中に<答え=因果関係=秩序=必然>があることを4歳児はすでに直観しています。 人類は永い歴史の中で、秩序によって自由が獲得できることを知ってきました。しかし、秩序は時に制約になります。制約は束縛を伴うこともあります。その点で制約と自由は対極にある概念とも言えます。しかし、人間は常に対極にあるものを意識しながら認識を深める存在です。愛─憎、喜─悲、明─暗、生─死、その中でものごとの本質を探ります。秩序と自由も表裏一体の言葉です。この対立の中に真実は存在します。
 子どもは何人かで遊ぶ時、かならずルールをつくります。
 自由な表現活動をするために俳句ではわざわざ5・7・5、和歌では5・7・5・7・7の語数の制約(ルール)を設定しています。
 画家は長方形のキャンバスに絵を描き、作曲家は五線譜の中で創作をくり返します。長方形も五線譜も秩序です。制約です。

 舞踊や花道、芸道と言われるものは究極に「型」という秩序を形成していきます。
 そして、最初から決まりごとなどあろうはずはないのに言語の中にはいつの間にか文法という秩序がつくられています。
 国家に法律が存在しなければ社会は機能しなくなります。
 宇宙には万有引力の法則があります。エネルギーには不変の法則があります。
 なにをとっても、どこをとっても秩序があることがわかります。
 そして、その秩序を生かしたり利用したりして新しい世界を人間は創造します。

 人間は秩序を発見し、表現する生命であることがわかります。このことを理解したうえで、<自由保育>や<子どもを自由に育てる>ことの真意について考え、そのためにわたし達大人が何を子どもに用意できるかを考えなければ、<ほっとけ保育><放任教育>に陥り、保育者も教育者も自らの存在理由がつかめず、向上心のない事故防止のためだけに存在する指導者になります。
 そこで、言及しなければならなくなるのが次のテーマです。   

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