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ボール遊びが育てる世界 6/6

三重的存在

 もう一度繰り返します。お母さん、お父さん、保育者の方々!
 まだ全く頼りない発達段階にある子どもでも、ボール遊びに対して、たとえ生き生きとした反応がなかったとしても、子どもの感受性が働いていないなどと考えないで下さい。子どもがボール遊びから感知するものは、ちょうど深く地中にある種子や、あるいは硬い外皮に包まれた樹木のつぼみが、春の太陽や、一瞬のうちに過ぎ去るそよ風を感じとるのと同じなのです。ですから、その後の子どもの様々な成長要素を、乳児の時に感じとり、それを注意深く育もうとしなければ、やがて発達のきざしが現れてきても、それを見抜くことはできませんし、その援助をすることもできないのです。
 すべてのことは関係性を意識した時にだけ
 目に見えないもの
 目に見えないのに認められるもの
 目に見えるもの
 この変わることのない「三重的な存在」が理解され、それによってはじめて真理も生命そのものも感得できるようになるのです。
 この三重的な存在については、例えば子どもの誕生の過程を考えてみて下さい。精子と卵子が合体した時、目には見えませんが新しい生命は確かに存在しています。やがて母体の中で動くようになると、目には見えませんが存在は認められます。そして誕生と同時にそれは目に見えるものとして存在するようになります。これが三重的な存在のものの見方です。子どもの内部で発達している諸要素もこれと少しも変わりません。
 そして、ボール遊びで重要な点がもう一つあります。言語能力の発達です。すでに述べたように、ボール遊びを通して、自分自身を発見するのと同じように、遊びによって言語能力の発達が促されていきます。子どもはその中でより確かに自己発見をし、成長します。

 以上のように、ボールは子どもにあらゆることを感じとらせる媒介物となります。そして最初の童具として子どもの友達になります。ボールによって子どもは自分自身を発達させ、人間の本性を導きだし、宇宙を網み目のように取りまいている目に見えない秩序を感じとらせ、身体と精神のバランスがとれるように成長させていきます。
 子どもの願いはボール遊びの中に現れ、外界のあらゆる現象はボールによって統一されて子どもに示されます。

(和久洋三著/『遊びの創造共育法 ②ボール遊びと造形』より抜粋)

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