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ボール遊びが育てる世界 3/6

紐つきボール

 さて、では子どもの発達のために、ボールをどのように扱えばよいのか。答えは単純明快、ボールの本質と子どもの要求に素直にしたがえばいいのです。
 しかし、乳児には、子どもの手元にあるようにしなければ遊ぶことができません。そこでまず、1本の紐を取りつけたボールを用意します。そして、ボールを手離そうとしない乳児に、ボールが自分と違う存在であることを知覚させるために、このボールをそっと乳児の手から引くことからはじめます(下記の画像をご覧ください)。大人がボールを持ちあげると、乳児の腕も一緒に持ちあがります。紐をゆるめると乳児の手と腕は自分の重みで元の位置に下がります。この活動を繰り返すと乳児はだんだん喜ぶようになります。

 これがボールで子どもと一緒にする最初の遊びです。やがてこの遊びから新しい遊びが生まれてきます。それは紐でボールを引いたり持ちあげたりするうちに、ボールが子どもの手から離れ、独立した別個の物として静かに自由に動く時です。
 前にはしっかり握っていたものが、いまは目の前で動くことによって「自分以外の存在」に対する関心が生まれ、これまで味わったことのない新しい感情を生むようになります。それによって、身のまわりについての認識は、ボールを通してしぜんに広がっていきます。
 この取るに足らぬような遊びによって子どもは、いままで母の胸を通して感じていた「結合」と「分離」の感覚を、ボールによっても知覚します。
 そしてこの遊びの反復によって
 「唯一の実在(もの)」 世界にたった一つしかない存在。
 「統一された実在(もの)」 様々な可能性を秘めている自己完結した存在。
 「別々の実在(もの)」 自分でない、他の存在。
 「分離した実在(もの)」 かつては結合していたのに、いまは分離している存在。
 このような知覚を身につけます。

(和久洋三著/『遊びの創造共育法 ②ボール遊びと造形』より抜粋)

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